腸脛靭帯炎
(ちょうけいじんたいえん)
ランナー膝の治療

好発

  • 長距離ランナーやサイクリストなど膝の屈伸運動の多いスポーツをしている方
  • 上記のような運動をされている方でO脚(内半膝)の方
  • 足首が内半している方
  • 路面が傾斜している場所で練習しているランナー
  • 初心者ランナーで大会が近いからといって急に走る距離を伸ばした方

基礎知識

腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)とは?

腸脛靭帯とは、腸骨(俗に言う骨盤の骨)から大腿外側(太ももの真横)を通り、腓骨(すねの外側の骨)に付着する筋膜の線維束(少し固いゴムバンドのようなもの)です

腸脛靭帯が走ったり、自転車をこぐなどの膝の屈伸運動をする際、
膝(ひざ)関節の外側2~3センチ上の部分にある大腿骨外側上顆(だいたいこつがいそくじょうか)という骨の出っ張り部分を前方または後方へと移動します。

この時に骨盤に付着する大腿筋膜腸筋(だいたいきんまくちょうきん)や大殿筋(だいでんきんが)が疲労などで硬くなってしまっていると、この二つの筋肉は腸脛靭帯にくっつくため、腸脛靭帯がピンと張った状態になり、大腿骨外側上顆を前後に移動するときに摩擦を起こし、炎症が起き外側の膝痛を感じるようになります。

ランニングで下り坂ではストライドが大きくなることや体重がかかるため下腿の内旋が強くなることから、この部分に負荷がかかりやすくなり、さらに痛みを強く感じます。

O脚の方や足首が内反(内側に捻っている状態)がある方は、地面を踏みこむ時に足の小指側に体重が乗る走り方になり、腸脛靭帯に衝撃・緊張が加わりやすく、腸脛靭帯炎(ランナー膝)の原因にもなります。

また、外側だけ削れた状態の靴で走っていても足首が内反状態になるので、腸脛靭帯炎を引き起こす原因となります。

一般的な車道は、雨水の水はけを良くするため、中央線をてっぺんに道路の端の排水溝めがけて傾斜がついています。いつも同じ方向に走っていると排水溝側の足に体重がかかることになり、これも腸脛靭帯炎を起こす原因になります。

症状

  • ランニング時の膝関節の外側2~3センチ上の疼痛
  • 階段昇降時の膝痛
  • 膝関節の外側2~3センチ上の圧痛
  • 下り坂を走ると痛みが増すことも
上記のような症状を感じている場合、腸脛靭帯炎である可能性が高いといえます。ランニングを伴うスポーツ選手の1.66.4%が、この症状にかかっているとされています。 多くの場合、走りだして、45kmくらいの距離で痛みが生じます。 それ以上の距離を、無理に走ると痛みが増幅することが少なくありません。 ランニングを始めて、半年から1年くらいの方に多く見られる症状です。「よく初心者ランナー病」などどいわれることもありますが、シドニーオリンピック金メダリストの高橋尚子選手も腸脛靭帯炎で苦しみました。決して初心者ランナーのみに起こる疾患ではありません。

【腸脛靭帯炎の症状・3つの段階】

腸脛靭帯炎の症状の進行には、大きく分けて3つの段階があります。

1段階: ランニングの走りはじめに痛みが現われます。痛みの強さはあまり強くないため、走り続けていると多くの場合、痛みは軽減あるいは消失するでしょう。準備体操やストレッチなどをしないで、いきなり走りだすと起きやすい症状です。この時期にランニングを中止して安静にする方はほとんどいません。「走っていると楽になるから」という理由で痛み始めている腸脛靭帯にどんどん負荷がかかり、やがて痛みで数キロしか走れない状態になります。

2段階:  走っている途中で痛みが現われます。走る距離を急に伸ばした時や、運動強度を上げた時に起きやすい症状です。走るのを止めると痛みも止まる場合が、ほとんどです。しかし、次第に休んでも痛みが解消されなくなっていきます。4~5キロくらいから痛み始め、10キロ~20キロ以上走ると痛みで走れなくなってきます。走った当日は階段の昇り降り(特に降りるとき)に強い痛みを感じ、痛めているほうの足を前に出すのが辛くなります。しかし次の日かその翌日には日常生活では痛みを感じなくなります。

3段階:  歩いている時や階段の登り降りなど、日常動作でも常に痛みを感じます。痛みで普通に歩けなくなったり、床に足が着くだけで痛みを感じたりするでしょう。症状が酷くなると、痛みで膝の曲げ伸ばしができなくなります。

診断

腸脛靭帯炎の診断をする場合、整形外科へ行きⅩ線(レントゲン)を撮っても異常がみられません。ランニングやスポーツをしていて膝の外側が痛く、Ⅹ線に異常がなければ「腸脛靭帯炎」と診断される場合が多いです。スポーツ整形などに行くと腸脛靭帯炎であるかを確認するテスト「グラスピングテスト」をおこなったりMRI画像を撮って確認したりする場合があります。

グラスピングテスト

膝を曲げた状態で、腸脛靭帯と大腿骨内側上顆の摩擦部(膝外側2~3セン)の部分を押さえ、徐々に膝を伸ばそうとすると痛みを訴える。

画像診断

MRIにて高輝度陰影を呈する場合もありますが、スポーツ整形を専門に見ている医者やMRIの画像がとても良い機器でないかぎり画像診断は難しいことが多いです。


グラスピングテスト・画像診断の落とし穴

ランニングなどスポーツをおこなって膝の痛みを訴え、スポーツ整形などに行き、グラスピングテストやMRI所見などで「腸脛靭帯炎」と診断されます。確かにMRI画像などで腸脛靭帯周辺に炎症反応がみられれば「腸脛靭帯炎」であることは間違いないのですが、私の臨床経験上腸脛靭帯炎と併発して他の部位(外側半月や外側側副靭帯など)を痛めていることがあります。この場合、腸脛靭帯炎と診断されたからといって腸脛靭帯炎に対する治療のみをおこなっているとなかなか治らない場合があります。外側半月や外側側副靭帯など痛めている部位にしっかりとアプローチすれば膝の外側の痛みは改善します。

整形外科での治療

一般的な整形外科ではⅩ線(レントゲン)の画像診断をして、異常がみられなければ消炎鎮痛を目的い湿布又は痛み止めの塗り薬を処方され「痛みがなくなるまでスポーツをひかえるように」といわれます。リハビリテーションをおこなっている病院では温熱療法やマッサージ、ストレッチや筋力トレーニングの指導などをおこなう場合もあります。
スポーツ整形の場合はより専門的な筋トレやストレッチの指導などがおこなわれますが、劇的に効果の高い治療法とは言えず、1カ月安静にしていて日常生活は全く問題ないが、走り出すとまた痛むというサイクルを繰り返すことになります。

整形外科での最新治療 PRP注射


湿布の処方や痛み止めの処方では傷付いた腸脛靱帯そのものの修復にはつながりません。そこで、近年になって整形外科で取り入れられているのが「PRP療法」です。

【PRP(皮膚再生)療法とは

「PRP療法」とは、筋肉や靱帯などに受けた傷を、薬ではなく自らの血液で治す方法です。
これなら、拒絶反応などの恐れがありません。 血液と言っても、「血小板」を取り出すことが重要なのです。

【コラーゲンが靱帯の損傷を修復する】

人間の靱帯の9割は、実はコラーゲンからできています。そのため、コラーゲンを効率よく体内に注入することで、傷が自然に治っていくのです。つまり、自然治癒力をただ安静にするよりもアップしていきます。

血液から取り出した血小板には、細胞分裂を活発にする成長因子が含まれています。そして、この血小板が固まるときにコラーゲンが作られる仕組みなのです

簡単に仕組みを説明しましょう。

【処置までの流れ】

30mlの血液を採血する

②血液を2回遠心分離器にかけて血小板を取り出す

③この血小板に塩化カリウムを加える(コラーゲンが作られやすくなる

④局所麻酔の後で恐縮液を患部に注入

【治癒力がアップする理由】
局所麻酔の後で注射するのには、理由があります。それは、凝縮液を注入するときに意図的に細かい傷をつけるのです。その後、液体を体内に送り込むことで、「今できた傷を治そう」とする治癒力を引き出すのです。そのため、安静にしているよりも患部の治りが早まります。



元々美容整形に使用されていたPRP注射ですが、スポーツ界でも使用される頻度が増えてきました。プロ野球選手などトップアスリートがおこなっていることで一躍有名になりました。しかし、保険適応外の注射であるため1本数万円します。ネットなどを見ると大変効果が高いとうたわれていますが、当院にもPRP注射を数回おこなったが、治らなかったという方もいることから、値段が高い割には確実な効果があるとはいえません。(PRP注射をおこなって治らなかった方は当院の治療を3回受けて完治しました)

当院での治療

土井治療院では、多くの腸脛靭帯炎(ランナー膝)の治療を行ってきました。現在、マラソンブームということもあり、ここ近年、腸脛靭帯炎でお困りのランナーの方が多数いらっしゃいます。当ルームでは鍼・スポーツマッサージを組み合わせた治療をおこなっています。今までいらっしゃった患者様は早期にマラソンへ復帰されています。腸脛靭帯炎(ランナー膝)でお困りの方は、ぜひ土井治療院の治療を受けにいらしてください。

腸脛靭帯炎(ランナー膝)の根本治療を考える上で大切なことは
腸脛靭帯と大腿骨外側上顆部の摩擦して炎症を起こしている部分の消炎鎮痛
大腿筋膜腸筋、大殿筋の緊張緩和
下肢筋肉・関節のアンバランス調整

この3つを行うことで、今後腸脛靭帯炎になりにくい身体作りをしていきます。

①腸脛靭帯と大腿骨外側上顆部が摩擦して炎症を起こしている部分の消炎鎮痛

炎症を起こしている部分に鍼(はり)治療を行っていきます。炎症の激しい場合は鍼(はり)に電気を流すパルス療法を行ったり、運動鍼を行います。この治療を行う際、摩擦部を的確に捉える触診力が必要です。ピンポイントで炎症部に刺鍼することにより高い治療効果が望めます。

②大腿筋膜腸筋、大殿筋の緊張緩和

上記でも説明したように、骨盤に付着する大腿筋膜腸筋と大殿筋は腸脛靭帯へとつながっている筋肉です。この二つの筋肉がデスクワークなどで座った姿勢が長かったり、運動のし過ぎなどで筋肉が緊張し硬くなってしまいます。この二つの筋肉が緊張していると、腸脛靭帯を引っ張るようになり大腿骨外側上顆を通る部分で摩擦を起こしやすい状態になってしまいます。そのため、大腿筋膜腸筋、大殿筋の緊張緩和を目的に鍼治療、スポーツマッサージを行っていきます。大腿筋膜腸筋と大殿筋の緊張がとれると腸脛靭帯にかかる牽引力も減り、摩擦が起きにくくなり、膝痛の再発予防になります。私の経験上、大腿筋膜腸筋、大殿筋を緩める治療は腸脛靭帯炎を治すうえでとても重要な治療になります。この治療のみでも膝痛はかなり緩和されます。

③下肢筋肉・関節のアンバランス調整

上記でも説明したようにO脚や足首の内反があると腸脛靭帯炎を起こしやすくなってしまいます。お尻の筋肉である中殿筋や大殿筋が緊張状態でいると、大腿骨(太ももの骨)はやや外転位となり、その結果大腿骨外側上顆は外側にズレ腸脛靭帯とぶつかりやすくなってしまいます。

膝より下にある前脛骨筋や後脛骨筋などの筋肉が緊張状態になると足首は内反を呈し、この状態も腸脛靭帯炎を起こしやすくなります。

下肢の筋緊張により骨の位置や関節がずれることにより、腸脛靭帯炎を起こしやすいバランスになっているので、緊張状態の筋を緩め、骨や関節を元の位置に戻すことにより、今後腸脛靭帯炎を起こしづらい身体作りを行っていきます。

整形外科や接骨院などでは、電気治療などで膝上3センチの圧痛部の痛みを取るのみの治療をすることが多く、痛みが治まってもまた膝痛が再発するランナーが多くみられます。当院の上記に上げた3つの治療法を同時に行うことにより、早期に膝痛の改善が望め、今後腸脛靭帯炎を起こさないための身体作りを同時に行うことができます。

腸脛靭帯炎以外の部位へのアプローチ

腸脛靭帯炎のみの痛みでしたら上記の治療で確実に痛みは緩和します。しかし、治療をしても痛みが変わらない場合は腸脛靭帯炎にプラスして他の部位を痛めていることがあります。膝の外側に痛みを訴える疾患として、外側半月板のズレや外側側副靭帯損傷、腓骨の下垂、仙腸関節のゆがみによる放散痛などがあります。これらの部位にもアプローチをしていかなければ腸脛靭帯炎をいくら治しても痛みの根本改善にはなりません。

腸脛靭帯炎の場合、痛みが発症して間もない方は一回の治療で治ることも多々あります。逆に痛みをかばい続けていよいよ痛みで走れないぐらいになってしまった人には多少治療回数を要することもあります。(そのような方でも治癒が望めます。)腸脛靭帯炎(ランナー膝でお困りでしたらぜひ土井治療院の治療を受けにいらしてください。)

鍼灸×スポーツマッサージ×整体を組み合わせた総合治療「土井治療院」

土井治療院

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